Q. チェロに張っている弦は
A. 今は 4本とも Pirastroの Chordaです
チェロの弦は材質で大きく分けると,金属弦・ナイロン弦・ガット弦という括りになりますが,ガット弦にはプレーンガット弦(裸ガット弦)というタイプがあり,主に A線 と D線で使われます
使用者は極端に少ないと思いますが,私は Chordaと TOROを使っています
先日まで A線と D線は TOROの弦を張っていましたが,A線が切れたので,A線・D線とも Chordaへ切り替え,両者の違いを実感しているところなので,「プレーンガット弦」についてあれこれ書こうと思います
TOROから Chordaへ替えると,Chordaの弦は細くて表面が滑らかと感じます
◆ 弦の直径の違い
Chordaにはの 3つのゲージの選択肢があります
A線は 21PM(1.05mm),D線は 29PM(1.45mm)が標準で,上下に 0.5PM(0.025mm)の差の製品がラインアップされていますが,標準以外が日本で流通しているのか不明です
* Pirastro Measurement (PM)は 1 = 0.05mm で,標準ゲージは 440Hz用,415Hzにする場合は "strong" gaugeを使うように同社の Webサイトに書かれています
TOROの方の選択肢は多く,日本での販売代理店(?)のコースタルトレーディングさんのWebサイトでは下記のラインアップで販売されています
A線: 116, 118, 120, 122, 124, 126, 128, 130
D線: 160, 165, 170, 175
* TOROには,表面の仕上げが異なる{ナチュラル,バーニッシュ}タイプがありますが,ナチュラル一本化検討というお知らせが以前ありました
Chorda(A-105, D-145)へ替える前は,TORO(A-126, D-175)を使っていたので,Chordaはかなり細く感じます
◆ 弦の表面の違い
弦自体の製法が違うようで,Chordaは表面が滑らかで,見た目から弦全体が同じ素材で出来ていることが分かります
TOROは,表現が難しいので写真を見てもらった方がよいのですが,見た目は均一ではなく,細い弦を撚り合わせているような感じで,表面は少しザラザラしています
▼ 比較1(レモンオイルの浸透具合)
毎日,チェロを弾き始める前に,レモンオイル(D'Addario)を布に付けて,弦を拭いています
Chordaは,張り替える時にレモンオイルを付けると,弦自体の色が変わることが分かり,レモンオイルが浸透していることが分かります
TOROは,表面の仕上げが異なる{ナチュラル,バーニッシュ}タイプがあり,どちらも使ったことがありますが,見た目で仕上げの違いは分かりませんでした
弦自体の色は Chordaよりも濃く,レモンオイルを付けた時,表面にオイルが付くのは分かりますが,弦自体に浸透しているかどうかは不明です
なお,「ガット弦を使用する前にオリーブオイルに漬けておく」という話もありますが,そこまではせずに,張り替え直前にレモンオイルを付けた布で拭くぐらいです
弓で弾く部分は,以前は松脂を拭き取るぐらいでしたが,最近はササクレ対策で,10日間ぐらいの間隔で,綿棒にレモンオイルを付けて塗っています
もともと,駒からテールピース側をそうしていたので,その延長線上の作業ですが,その直後は弓がオイルで滑るので,普段使わない弓を使っています
▼ 比較2(ヒゲの出来具合)
Chordaは表面が滑らかな点はプラスですが,指板上で押さえるところにヒゲが出来やすい傾向があります
ヒゲを引っ張ってしまうと弦にダメージを与えることになります
また,ヒゲは放置すると大きくなるため,見つけ次第,ハサミで切ります
TOROでもヒゲが出来る時はありましたが,それよりも,製造過程で出来た瘤のようなものが悪化して弦が切れたことの方が多い印象です
▼ 比較3(ササクレの出来具合)
弓で弾く箇所は,Chorda,TOROとも,ササクレが出来ることがあり,A線でよく発生します
どちらかと言うと,Chordaの方がササクレが出来やすい印象があります(次の耐久性の比較へ)*写真は TORO
このササクレは,ヒゲとはちょっと性質が異なるので,切らずに放置していますが,いずれはそこで切れることになるので,ササクレが出来たら弦交換が理想です
ササクレの箇所を弾くと弓の毛が引っ掛かることがあるため,なるべく外して弾きますが,弾いている時にササクレの所で切れたことが何度もあります
また,スタンドに置いた状態で切れたこともあります
▼ 比較4(A線の耐久性)
Chordaと TOROでは,Chordaの方が表面が柔らかい印象があります
私の使い方(使用頻度とササクレが出来ても交換しないスタンス)では,A線は切れて寿命が終わりますが,Chordaは 4ヶ月ぐらいでしょうか
あまり弾いていなかった時は 1年以上保ったこともあります
切れる箇所は,弓で弾くところ,指板上,ナット辺りと様々です
TOROの方が寿命が長い印象ですが,弦自体の製法が違うため,TOROでは瘤のような箇所で切れたり,ほつれが出来て切れたことがあります
TOROでも1ヶ月で切れたことがあり,工業製品ではないので,当たり外れはあると思います
▼ 比較5(D線の耐久性)
D線も,A線と同じように弓で弾く箇所で切れたことはありますが,それよりも,弦の表面が痛んで音が綺麗に出なくなって寿命を迎える印象です
音が変なザラつきとかカスレが続くようになったら弦交換が理想ですが,その弦を位置を変えて張り直したり,反転したりしている内に,ダメージが大きくなって切れるか,交換を余儀なくされる感じです
Chordaの方が表面が柔らかい印象があり,Chordaの方が早く痛むような気がします
▼ 参考(Chorda G線の耐久性)
D線の弦の表面のダメージのことを書いたので,プレーンガットではない,シルバー巻きの G線についても触れておきます
いま使っている G線は Chordaで,21ヶ月目です
余談になりますが,Chorda の G線と C線は,張り替え直後はちょっと癖があり,弦の表面を指で少し滑らせただけで大きな音が出ます
キュッキュッというような音で,出ないようにするには,弦から指を離す時に垂直に持ち上げ,弦の表面で指が動かないようにする必要があり,かなり気を遣います
現在も少しは出ますが,気になる程の大きな音ではなくなっています
それで,G線の弦の表面のダメージですが,毎日弾く使用頻度だと,半年ぐらいで弦の表面が滑るようになります
最初は原因が分からず,弦についた松脂を落としたり,弓を変えたり,試行錯誤しましたが,同じ G線でも,よく弾くところだけが滑り,その上下では滑らないので,弦の表面のダメージと判断しました
(松脂をたっぷり付ければ滑りませんが,そうするとプレーンガット弦の発音に適さない状態になってしまいます)
Chorda G線と C線はシルバー巻きの弦ですが,使っている内に表面が摩耗して滑るようになるのかもしれません
結局,G線は一度反転させましたが,それでも滑るようになったので,テールピースの所で弦を一周させて弓で弾く場所が変化するようにしています
最近はそれでも滑るようになり,C線も滑るようになってきました
21ヶ月目の現在,音自体に不満は無いのですが,替え時が近いようです
▼ 比較6(どちらが弾きやすいか)
Chordaの表面は滑らかで平らです
TOROの表面は平らではなく,ザラザラしたような感じです
Chordaの方がスライドはやり易い気がしますが,TOROでスライドすると問題がある訳でもなく,先入観と印象ぐらいの違いです
運指は,どちらが弾き易いとか,弾きにくいとか感じたことはありません
弦の太さが違うため,細い Chordaの方が発音しやすい気がします
逆に音量は,太い TOROの弦の方が大きく出ていると思います
少し前まで,TOROの D線で径 175の太い弦を使っていましたが,Gの音を出した時に低音がしっかりと出て,Celloが鳴っていることが感じられました
ただ,良いことばかりではなく,ここまで太いと開放弦 Dの音の立ち上がりが少し遅れるような感じもありました
◆ まとめ(極私的な感想)
プレーンガット弦,Chordaと TOROを比較したら長文になりました
今は TOROから Chordaへ替えた直後なので,Chordaの表面の滑らかさが心地良いですが,しばらくしたら TOROの太いゲージに戻したくなるような気がします
ここでは音色の比較はしていませんが,どちらもプレーンガット弦の音で優劣はありません
使うチェロによって音は異なり,音は個人の好き嫌いで判断するしかないと思います
むしろ,弦の太さの違いによる音の違いの方が選択肢として重要な要素になると,ここまで書いていて思いました
プレーンガット弦は,他には Aquila,Gamut の製品があり,使ってみたいと思っていますが,今のところ,縁がありません
Chordaを最初に購入したのは 20年以上前で,その頃に入手した古いチェロで使ってきました
その後に入手した 5弦チェロに張る弦として TOROのガット弦を購入して...という経緯で「プレーンガット弦」を使ってきましたが,ガット弦について,また書き込みしようと思います